Laboratory of Physiology

Graduate School of Pharmaceutical and Nutritional Sciences / Institute for Environmental Sciences,
University of Shizuoka

環境生理学研究室

静岡県立大学 大学院薬食生命科学総合学府 環境科学専攻環境科学研究所

研究プロジェクト Research Projects

  1. 消化管生理機能に対する短鎖脂肪酸の作用と作用機序に関する研究
  2. 腸管管腔の化学物質受容と消化管生理機能に対する影響に関する研究
  3. 消化管粘膜のプロスタグランジン産生と消化管生体防御機構
  4. 腸管神経系の神経回路解析

1. 消化管生理機能に対する短鎖脂肪酸の作用と作用機序に関する研究

短鎖脂肪酸は大腸粘膜を刺激し、腸管平滑筋を収縮させたり、上皮膜における電解質輸送(水分泌)を惹起させたりすることがすでに報告されており、我々はそのメカニズムに関する研究を進めてきた。 現在は、手術検体としてヒト結腸や回腸終末部の提供を受け、短鎖脂肪酸のヒト腸管平滑筋運動や経上皮電解質輸送に対する作用を検討している。 また、短鎖脂肪酸以外にも腸管粘膜による様々な化学物質の受容機構と消化管の生理機能に対する作用についても、ヒトおよび実験動物を用いて検討を進めている。

2. 腸管管腔の化学物質受容と消化管生理機能に対する影響に関する研究

消化管が、その本来の生理機能である食物の消化、栄養分の吸収、残渣の排出といった機能を果たすため、体外から摂取される有害化学物質や微生物から生体を防御するため、そして、腸内細菌との適切な共生関係を維持するためには、消化管はその管腔の「環境」を適切に把握する必要があると思われる。 したがって、いわゆる「腸内環境」を監視する監視システムが腸管粘膜には存在すると考えられる。 最近、味覚や嗅覚にかかわる受容体がクローニングされているが、これらの受容体が腸管粘膜にも発現していることが報告されつつある。 我々は最近、特に大腸におけるこれら受容体の発現や、その生理的役割に関する研究をスタートさせた。 これらの受容体は、舌や鼻腔において外界の化学物質を受容し、外部環境を知覚して我々が行動する上での情報としているように、「腸内環境」の化学物質を受容し、消化管生理機能を調整する為の情報源としているのかもしれない。

3. 消化管粘膜のプロスタグランジン産生と消化管生体防御機構

化管粘膜のプロスタグランジン産生は、消化管粘膜の維持にとって重要であることは良く知られている。 我々は以前、大腸粘膜上皮、特に陰窩細胞において、腸管神経系における感覚神経が含有する神経ペプチド、サブスタンスPと相互作用し、相乗的な管腔側への塩素イオン分泌、すなわち水分泌が惹起されることを報告した(Hosoda et al. 2004 Am J Physiol)。 これらの結果などから我々は、腸管粘膜におけるプロスタグランジン産生は腸管粘膜が現在どれほど危険な状態にあるか、いわばアラート・レベルのような指標としての役割があるのではないか、という仮説を立てた(Karaki and Kuwahara 2004 Neurogastroenterol Motil)。 現在は、どのタイプのプロスタグランジン受容体が腸管壁のどこに、すなわち、上皮細胞、神経細胞、平滑筋細胞、免疫細胞、その他に発現し、どのような役割を果たしているのかを、生理学的手法、免疫組織化学的手法によって、ヒトおよび実験動物において検討している。

4. 腸管神経系の神経回路解析

消化管の生理機能は、腸管神経系と呼ばれる完結した神経反射回路を持つ神経系によって制御されている。 「腸内環境」のシグナルを感受した感覚細胞の情報は壁内一次求心性神経に伝えられ、介在神経も関与して情報処理され、最終的に平滑筋運動神経や分泌作動性神経を介して平滑筋や粘膜上皮に情報伝達され、平滑筋収縮や水分泌が惹起される。 このような腸管壁内の神経反射弓は、研究テーマ1および2に関する作用機序にも深く関連している。 また、研究テーマ3のプロスタグランジンも腸管神経細胞に作用し、その機能を修飾している。 したがって我々は、上記研究テーマの更に基礎的な研究として、腸管神経系の形態や機能について研究を行っている。

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